学校法人杏林学園 杏林大学医学部付属病院
循環器内科 不整脈センター
診療看護師
前田 明子
心臓植込みデバイス(ペースメーカ、植込み型除細動器:ICD)患者さんのケアに興味を持ったきっかけ
デバイスが植え込まれている患者さんは、生涯、デバイスと共に過ごしていくことになります。患者さんの中には、必要以上に電磁干渉を気にして日常生活範囲や行動を狭めてしまったりすることも少なくありません。さらに、ICD植込み患者さんの場合、意識下で電気ショックの作動を受けることもあり、かなりの衝撃を経験することになります。そのような強い衝撃によって、強い恐怖心や不安が生じ、鬱状態を引き起こすこともあります。また、ICD植込み後に仕事の配置転換や退職を余儀なくされる患者さんもいらっしゃいます。
実際、新人看護師の頃、何度も意識下でICDのショック作動が起こり、亡くなる間際まで大変な思いをされた患者さんを目の当たりにし、「心臓植込みデバイスって何だろう」、「どんなケアが必要なのか」と強く考えさせられたことが、デバイス患者さんのケアに携わるきっかけとなったと言っても過言ではありません。
退院後の生活を考えた個別の生活指導
心臓植込みデバイスを植込まれた患者さんは、手術後の日常生活において、様々な不安や心配事、疑問などがあります。たとえば、携帯電話や電子レンジなど日常生活で使用するものから仕事上の電気機器などの電磁干渉の影響、植込み側の上肢の運動制限、身体障害者申請、自動車の運転制限に関することなどです。
これらの不安や疑問が少しでも少なくなるよう、デバイスを植込む前から正しい情報提供をし、きちんと理解していただくことが大切です。
個々の患者さんの日常生活や仕事内容に合わせた指導が重要です。過度の不安などにより日常生活が制限されたり、行動が狭められたりすることがないよう、理解度に応じた情報提供が必要となります。
受講生へ伝えたいこと「植込むことを患者さん自身が自己決定できるよう」な情報提供
ペースメーカやICDを植込まれた患者さんは、デバイスを植込まれたから大丈夫ということにはなりません。生涯をデバイスと共に生活していくことになります。
デバイス植込みが必要と医療者に言われたからではなく、植込み後の日常生活を患者さん自身が前向きにとらえてデバイスの必要性を患者さん自身が理解し、デバイス植込みを自己決定できるようかかわることが大切です。
本講義では、心臓植込みデバイスを植込む患者さんの継続的なケアの必要性を一緒に考え、明日からの看護の一助になる内容を盛り込みます。